ケーキ屋の彼
「亜紀ちゃん、明日の午後3時に私の家にいらっしゃって」
櫻子は、一応メールで家までの地図を送ると亜紀に言った。
「うん、分かった」
そう約束をし、櫻子と柑菜は亜紀と別れる。
櫻子と柑菜は、亜紀が見えなくなるまでその場で見送りをした。
亜紀の姿が見えなくなると、2人は亜紀の進んだ方向とは反対方向を向く。
「それじゃあ行きましょうか」
2人は、駅に向かって歩き出す。
もちろん、目的は明日の亜紀の誕生日のプレゼント購入のためだ。
事前に2人は、お互いにそれとなく亜紀から欲しいものを書き出していた。
そして話し合った結果、亜紀が一番欲しているものは腕時計ということになった。
「柑菜ちゃん、明日のケーキ、私が取りに行ってもいいかしら?」
「え?」
櫻子は、柑菜が秋斗のことを好きなだということは知っているし、2人が顔を合わせる唯一の場所があのケーキ屋だということも知っている。
なのに、それを奪うなんていつもの櫻子らしくない。