嘘つきなキミ(続編)
ーはやとー

ゆうきの病室を出たあと、書類を渡すのを忘れたことに気付き病室の前に戻った。
ドアを開けようとすると、ゆうきとこあの話し声がきこえた。

あいつ、こあに言ってなかったんだな...
黙っちゃって、バレバレだよ。

俺は一息ついてなにもなかったかのように病室に入った。

案の定こあに聞かれ、ゆうきを見るとバツの悪い顔をしていた。

俺は誤魔化すよーにこあに説明して、こあは納得したようだった。

全くお前ら兄弟はっと心の中で呟いて病室を後にした。

病室を出た俺は、自分がにやけて居るのに気付いた。
高校の時の事を思い出していた。
ゆうきは、こうへいそっくりだ。
こあも、みゆきにそっくりだ。
顔はもちろん、行動、発言までなにもかも...。
みゆきがいた頃の事を思い出して、懐かしい気持ちになった。

みゆきは、5年前ガンで亡くなった。

沢山辛い治療もしたし、手術だってした。
それでも、みゆきのガンは治らなかった...

こあは、俺の前では涙一つ流さなかった。
「お父さん大丈夫だよ。私がついてるから」って...。
でも、夜1人で部屋で泣いていたのを俺は知っている。
親なのになにもしてあげられなかった。

まだたった10歳なのに俺より大人だった。


そんな事を思いながら俺は医局に戻った。





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