【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
「社長…」
「…要人、だろ?」
「………はぁ」
ネクタイが嫌いだと言って、私の前では警戒心など全く持たずに緩めるその仕草に、3年越しで通算何百回目かの溜息を、私はこれ見よがしに吐く。
ファーストネームで呼ぶように申し付けられたのは、配属当日だ。
『早く馴染んで欲しいからな』
今年34歳になる彼は、その元々の才能と手腕を駆られ、前野家の三男にして、24歳からこのコーポレーションを取り仕切っている。
業種としてはプランナー。
前野コーポレーションは、他の様々なプランナーを統括して、傘下においている。
ブライダルやら環境やら、それは多種多様だ。
先代までは、ブライダルを中心にしていたようだけれど、今の社長になってここ数年は、企業の拡大と共に手広く…というとなんだか言い方が悪いけども…展開している。
ハーバード大学で経済学をコンセントレイション(専攻と言う意味らしい…分るかそんなもの)していただけあり、その手の技術はまるで赤子を手の捻るよりも簡単なんだろうな、と思う。