【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
ルックスは、サラサラとした黒髪に、薄い茶色の瞳。
彫りの深い顔には、いつも冷静さが張り付いている。
そこに、見上げるほどの高長身と甘い低音ボイスが付いてくれば…。
絵に書いたような『ハイスペック』を背負った男性の出来上がり、だ。
つまりは、どこからどうみても…頭に来るほどのイケメン。
非の打ち所がない。
まぁ、そんな隙もないけれど。
何でもそつなくこなし、何かに付けてスマート。
自分の見せ方、ポイントはしっかり心得てるんだろうな…。
ーーこれで、女癖さえ悪くなければ…と心底思うーー
なのに、どうしてだろう。
何故か憎めないのは…。
それはきっと、彼が自分を誇示せずに、周りと溶け込んで生活を送っているからだと思う。
威厳があってクールだけれど、社員に対して実はとてもフランクである。
…まぁ、あんなクールな仮面を持っている所からして、誤解は受けているようだけれど。
涼しげな顔をいつもしていて、腹の中が分からない…。
なんでも、聞くところによると、そんな印象を受けるそうだ。
女子社員が少ない秘書課では、有名な名称。
前野要人は、「氷の帝王」だ、と。
でも、私はそうか?と疑問に思ったりしているんだけれど…。