【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
「要人社長?このプロジェクトですが、このまま進めてしまってもよろしいでしょうか?よろしければ、そのように指示致します。中心となる人数も固まりましたので…」
「あぁ…頼む」
「それから、この後、二時半と四時から会議が入っていますので、こちらに目を通しておいて下さい…」
「…ああ」
「…要人社長?」
「……ん?」
「こちらの書類にサイン頂いても?」
「…あぁ。分かった」
席に付いた途端に黙り込んで、寡黙になる彼。
先程とは違い、なんとなく上の空。
コーヒーカップを上げたり下げたり、手付きは忙しないのだけれど…。
視線は、一点で止まっている。
なんとなく、嫌な予感はしているけれど、一応尋ねる。
「…?何か?」
「いや。綾小路の足があまりにもキレイなもんだから……そうだな。ストッキングはもう少し薄いベージュでもいいかもしれない」
はぁ…。
ほんとに、この人何処かに飛ばされないかしら。
あぁ。
社長は普通飛ばす側か…。
いや、役員会議に通せば解雇には出来るのか?
そんなことを思いながら、つつつ、と彼から離れて距離を取った。