たとえ届かなくても君を思うほどに切なくて。

ーガラッ

教室のドアが開くとともに、ざわついていた人たちが静かになった。

風月も席に戻った。

そういえば、風月は、席どこなんだろう。
キョロキョロと周りを見回す。

あ、私の隣にいるじゃん。
本当、情けないな、私。

「みなさん。おはようございます。」
「「「おはようございます」」」
みんなが先生に挨拶を返す。

担任の先生は、女の先生だった。
「私は、狩野 泉(かのう いずみ)です。みなさんの担任になったので、よろしく」

明るい性格で、ショートの髪の毛がとても似合っている泉先生。

楽しくなりそうだな。

「じゃあ、自己紹介しましょう! じゃあ、藍沢くんからね」

え…自己紹介か…苦手だな。

藍沢くんと呼ばれた男の子が立ち上がり、自己紹介を始めた。

スムーズに進んでいく自己紹介。
緊張しながら、他の人の自己紹介を聞いていた。

「じゃあ、甲本くん」

返事をして立ち上がった風月。
なんて自分を紹介するのかな。

「甲本 風月です。よろしく。」

…短い。もっということあるでしょ。

風月の自己紹介が、終わってから、女子がざわめき始めた。
風月が、カッコいいとか、口々に言っている。

ーズキン

なんでだろう。胸が痛い。なんか、苦しい。
この感情、なんだろう。今まで感じた事がない感情。これは…一体なんなんだろう。

「じゃあ、鈴屋さん。…鈴屋さん？」
「あ、はい…」

呼ばれてたんだ。気づかなかった…

「鈴屋 凛です。よろしくね」

風月の自己紹介を短いとか言ったけど、私もそんなに変わりがない自己紹介になってしまった。

そのあと、彩夏が自己紹介を終え、
クラスのみんなも自己紹介を終えたところで、ちょうどチャイムが鳴った。