セカンド・ラブをあなたと
どの季節にも思い出はあるけど、クリスマスが近づくその時期は特に。
世間が浮かれてるあの気配に、思い出してしまう。

『リノの鍵につけてる鈴って、特別なもの?』
中学に入る年に、亡くなった実母と近くの神社で買ったお守りの鈴。でも、それで特別というわけではなく、かわいいから持ち続けているだけだった。

『お母さんがくれたものだから、特別と言えば特別だけど、買った神社に納めに行ってないから、微妙に罰当たりかも…。どうして?』
『じゃあ、納めに行ったつもりで、僕にくれない?』
お守りがほしいのかと思っても、素直に聞けなかった。神頼みしそうには思えなくて…。
宣告された余命を越えてからひと月近くが経っていた。

『…いいよ。これでよかったら…』
キーケースから鈴の根付をはずして、聡くんに渡した。

聡くんはしげしげとそれを見ながら言った。
『リノが僕にくれるのは、これが最後でいいから』
『…?』
『僕を思い続けないでいい。僕はこの鈴をもらったから、もういい』

ほしがったのは、お守りではなく”鈴”。つまり、私だと気づいて言葉に詰まった。

『お前たちが幸せになってくれることが、僕の生きた証になる。
だから、いっぱい幸せになって』

泣きそうになるのをこらえて言った。
『今度はうんと年下の人と結婚しようかな』
『ハハッ。それじゃその相手は今まだ中学生かもな』

聡くん、あなたが笑ったから、私の対応はあれでよかったんだよね?
でも、思い出す私は、いつもつらくて泣いちゃうんですけど…。
翔さんの前で聡くんのことで泣くなんて…ダメなのに…。
唇をかみしめた。

翔さんがハンカチを差し出してくれる。
「ごめん…」
「いいよ」
子どもをあやすように、頭をポンポンとしてくれる。
余計泣いちゃうじゃない…。
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