君を愛していいのは俺だけ
顔だけじゃない。
声色も、微笑んだ時に少し下がる目尻の雰囲気も、スーツがよく似合う手足の長さも。
まっすぐで優しい瞳も、ちょっと薄い唇も、綺麗な稜線のような鼻筋も。
約七年ぶりに現れた周防さんは、どう見ても“紀 陽太(きの ようた)”であるはずなのに……。
「最上さんも、なにかお飲み物を頼んでください」
ゆったりと微笑んで手渡されたメニューを広げつつ、円卓の向かいにいる彼ばかりが気になってしまう。
「アイスミルクティーをいただきます」
夏の暑さもせいもあるけれど、緊張と混乱で喉がカラカラだ。
ひとまず冷静になろうと、大好きなミルクティーを注文して、ふっと息をついた。
「すみません、実は釣書の内容を忘れてしまって……」
「あぁ。堅苦しいものを渡されても、覚えきれないですよね。私もろくに見ないでここに来ているんです」
「えっ!?」
「頼まれたんです。どうしても見合いしてくれって。だから、釣書もお名前くらいしか覚えていませんし、写真なんて見てません」
「そうですか……」
運ばれてきたアイスミルクティーにストローを入れ、ひと口含んで彼の出方を待つ。