君を愛していいのは俺だけ

 入社した当日に桃子ちゃんが連れてきてくれたビストロに入ると、そこそこ混み合っている。
 五分ほど並んで席に案内され、ランチメニューから各々注文を済ませた。


「それで、どうしたの?」
「……聞いて驚かないでほしいんだけど」
「うん」
「桃子ちゃんに告白されたんだ」

 店員が入れてくれた水を飲んで、ふうっと息をついた彼は、私の反応を見て黙っている。


「知ってたよ。桃子ちゃんが滝澤さんを好きだってことは」
「なんだ、そうなの? まぁ、女同士ならそういう話もするか」
「うん。でも、告白したのはびっくりだけど」
「俺の方がびっくりしたよ。てっきり社長のことを狙ってるとばかり思ってたんだから」

 セットのサラダが運ばれてきて、テーブルに用意されているドレッシングから焙煎胡麻ドレッシングを選んだ。

 今日の滝澤さんは、いつになく悩み顔だ。
 告白された男性はこんなに悩むものなのかと、初めて知った。
 あの頃の勇気があれば、私ももう一度陽太くんに告白できるのかな。


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