君を愛していいのは俺だけ

「秋吉さんって、嘘がつけない人なんですね」
「どういう意味ですか?」

 どんな話をされても、顔に出さないで冷静に受け答える自信はある。
 前職でも、超絶ムカついた上司にニコニコして過ごしていたくらいだ。

 だけど、陽太くんのこととなると、そうはいかなくて。


「秋吉さん、社長室に行ってたんですよね?」
「っ、なんでそれを」
「さっき、社長室の人が気を利かせたのか、秋吉さんは社長と話してるから戻るの遅くなるって、来たついでに話していったのが聞こえたので」

 あの親切な先輩か……。


「隠したってことは、秋吉さんも社長に気があるからですか?」
「まさか! ただ入社初日に社長と話すなんて、目立つだろうからあまり言いたくなかっただけで」
「ふぅーん」

 滝澤さんが流してくれて、こっそりとひと息つく。

 桃子ちゃんも周防社長が気になっているのだとしたら、なんだかややこしいことになりそうだ。


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