君を愛していいのは俺だけ
「相手の方は?」
「あぁ……」
私の問いかけに小さく笑うだけでなにも言わない彼は、アイスティーに口を付けた。
「お願いってなに? 早くしないと」
「大丈夫。落ち着いてまずはミルクティーでも飲んで」
あまりにも彼がゆったりとしているから、私の方が焦ってしまう。
もし相手の方がやってきたら、私がいることを咎めるに違いない。彼は断るって言ってたけれど、穏便に事を済ませたほうがいいはずで。
「仁香、分かってないだろ」
「なにが?」
「見合い、もう断ったんだよ」
「え!? 相手の方、帰ったの?」
だから、私を呼びだしたのかと思って、ホッと息をついたのも束の間、彼がまた微笑みかけてきた。
「返答期限内に断ってある」
「……だって、佐久間さんと進めるって」
「それは別件」
私の早とちりだったと知り、一気に身体の力が抜けた。