君を愛していいのは俺だけ

「桃子ちゃんには、俺がフォロー入れておくよ」
「えっ!? なんの?」
「出張の件」

 滝澤さんは私の気持ちや考えていることまでお見通しで、時々怖いくらいだ。


「秋吉さん、たまに心の声が言葉になってるから気を付けて」
「っ!! 本当に? 私、今言ってた?」
「桃子ちゃん、ってはっきり聞こえた」

 軽快にキーボードを叩く滝澤さんは、黒縁眼鏡の向こうから私をちらりと見て、小さく笑った。


「仕事だってことくらい、桃子ちゃんも分かるはずだよ」
「うん、そうだね」

 本音を言えば、すごく楽しみだ。
 仕事だと気持ちを落ち着かせようとしても、長年の想いでどうしても浮かれてしまう。


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