君を愛していいのは俺だけ

 それから、先輩方と調整を進め、予定通り三週間後に出張が決まった。

 行き先は長崎県で、一泊二日の予定だ。
 当日は羽田空港の出発ロビーで待ち合わせることになり、先輩から宿泊施設の予約を頼まれた。


「絶対に禁煙部屋でお願い」
「はい。私も禁煙がいいと思ってました」
「佐久間さんは喫煙者だから、聞いておいた方がいいかも。社長にも」

 先輩にアドバイスを受け、早速二人に連絡を入れて希望を尋ねる。
 佐久間さんは空室状況に合わせてくれると言ってくれて助かった。あとは……社長にも聞かなくちゃ。
 あの頃は煙草を吸っていなかったけど、今はどうなんだろう。


『はい、周防です』
「MDの秋吉です。先ほどはお疲れ様でした。今、少しだけお話できますか?」
『いいよ。なに?』
「出張で宿泊するホテルの部屋なんですけど」

 彼は察したように、「あぁ」と相槌を打った。


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