君を愛していいのは俺だけ

「まぁ、それも冗談だけど」
「えぇっ!?」

 まんまと騙された私を見て楽しそうにしていた彼が、目尻を下げてやわらかな表情を見せた。


「俺の隣に座って、誰にも絡むことなく楽しそうにしてただけだから安心しなさい」
「本当……ですか?」
「本当。でも、俺が話しかけるとすごく緊張したり、じーっと見つめてきてはいたけどね」
「…………」

 それなら、なんとなく記憶の片隅にはある。
 彼が隣にいるだけでドキドキしていたし、耳元で桃子ちゃんと滝澤さんがお似合いだとか囁かれたり、そんなことがあったから……。

 でも、抱きついたりしていなかったと聞かされてホッとした。
 周防会の先輩方が気に食わない様子なのは、ただの妬みなのかもしれない。


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