君を愛していいのは俺だけ
「真に受けてるのか、この前言ったこと。あれ、冗談だからな?」
「えっ!! そうなんですか!?」
また屈託のない笑顔を見せられて、頬が熱くなる。
温泉とビールのせいにしようと、空いた手で扇いでごまかした。
「酔っ払ってはいたけど、抱きついたりしてたら滝澤に介抱を頼んだりしないよ」
私を横目に、彼はビールをひと口含んでから脚を組み替えた。
「あの夜は、俺の隣でずっとにこにこ笑ってたよ。話しかけられれば普通に受け答えはしてたけど、必ず“陽太くんは?”って俺に話を振ってくるのが厄介だっただけ」
「っ……!!」
真実を聞かされても、まったく記憶にない。
だけど、あの日同席した人たちの前で、彼の名前を呼んでいたなんて……。それも、彼が“元彼の陽太くん”かどうかも確かめていないうちに、なんてことを。
周防会の先輩方に目を付けられたり、元カノの噂を流されているのも、自分のせいだったなんて。
もう二度とお酒に流されるものかと、強く心に誓った。