君を愛していいのは俺だけ

「ねぇ、そんなことより、社長とひと晩一緒にいて、なにも起きなかったの?」
「出張なんだから、なにかあるわけがないでしょ? また桃子ちゃんはそういう話を」

 滝澤さんが制しても、桃子ちゃんは興味津々で引いてくれそうにない。


「長崎って、夜景がすごく綺麗なんでしょ?」
「うん、綺麗で感動したよ。部屋からも見えたの」
「そんなロマンティックなところにいて、なにもなかったの?」

 彼女は、ことあるごとに私と社長を話題にする。歓迎会の時も、社長に気があるはずなのに隣に来ることもなかったし……。
 もしかして、私の気持ちを察して、気を使ったりしてるのかな。


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