君を愛していいのは俺だけ

「困らせるつもりはないんだけど、仁香ちゃんと社長ってお似合いなんだもん」
「……そんなことないよ。長崎では、移動疲れもあってすぐに寝ちゃったんだ」

 あまり追及されるのは困るけど、お似合いだなんて言われたら、頬が緩みそうになる。

 本当は、すぐに寝付けないほど嬉しくて、日付が変わってからもしばらく起きていたけれど。
 陽太くんとの過去も、再会してからのことも、長崎の夜も……全部、宝物のような思い出で誰にも言いたくないから、話が掘り下げられないようにごまかした。


 二時間経って店を出ると、肩を竦めるほど冷たい秋風が吹いていた。
 スカートを穿いている桃子ちゃんは、寒そうに滝澤さんの後ろに隠れている。


< 100 / 431 >

この作品をシェア

pagetop