イジワル騎士団長の傲慢な求愛
***


「それで、私たちはどうすればいいのかしら」

駆けていったルーファスの背中を見つめながら、残されたシャンテル、フェリクス、ルシウスが小声で密談を交わす。

「とにかく、我々は別の観点からセシル様を探しましょう。あそこにいるのがダンテ侯爵です。わかりますか?」

フェリクスの視線の先に、一際目立つ仮面と燕尾服を纏った壮年の紳士がいる。
そしてその彼を見守るように配置された、数人の臣下たち。

「あの脇に控えているのが、この件を直接指揮していると思われる側近のエドガーです。あの者を連れ出して、なんとか内密に取引をしたい」

「問題はどう連れ出すかです」

「……私がやってみましょうか?」

言い出したシャンテルに、フェリクスとルシウスはぎょっと目を丸くする。

「冗談じゃありません! 危険すぎます!」

「大丈夫。仮面があるのだから身分はばれないわ。誘惑して外へ連れ出したところをふたりが縛ってくれればいい」

「あなたにそこまでさせるわけにはいかない! 私が正面から話を――」

「正面からいって相手にしてくれるわけないじゃない。大丈夫よ。ふたりがちゃんと私を見張っててくれれば、安全だもの」

仮面の奥の瞳を、無邪気にウインクさせるシャンテル。
いつから姉の方までこんなにもお転婆になってしまったのだろうか。フェリクスは頭を抱える。
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