イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「待ってください! ルーファス様」

ルーファスの腕にフェリクスが鬱陶しく絡みついてきて、仕方なく足を止めた。

「邪魔するな! 俺は――」

「奴等の行くあてに、心当たりがあるのですか!? 闇雲に探し回ったところで仕方がありません!」

「関係ない! 一刻も早く探さなければセシルが――」

「敵の首謀者はわかっているのです。それを抑えた方が早い」

フェリクスは、パーティー会場に視線を投げた。
この中に、セシルを攫った首謀者であるダンテ侯爵とその臣下がいるのだ。

「セドリック伯爵やセシル様へ手を下すよう指揮を取っているのが、ダンテ侯爵の側近・エドガーです。穏便に連れ出して、セシル様の居場所を聞き出して――」

「……悪いが、悠長なことをしている時間はない」

その側近とやらに居場所を聞いたところで、素直に答えるとは思えない。しらばっくれられて終わりか、吐かせるにしても時間がかかり過ぎる。
とにかく、今は一分、一秒でも早くセシルを見つけ出さなければ。
ルーファスの心は、悠長に策を練っていられるほど冷静ではなかった。

「ルシウス! 側近とやらは任せた! 俺はセシルを探しに行く!」

今頃、助けを待って涙をこぼしているかもしれない。セシルの悲鳴が聞こえた気がした。
じっとしていることなど、到底ルーファスには出来なかった。
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