イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「――それでは、誓いのキスを――」

神父の宣誓とともに、ルーファスの体がセシルへと向き直る。

ドクドクと、セシルの鼓動はせわしなく打ちつけていて、緊張から膝が崩れ落ちてしまいそうだ。

ルーファスは、シャンテルとセシルが入れ替わっていることを知らない。
セシルの顔を見たルーファスがどんな表情をするか――もしがっかりされてしまったらどうしようかと、気が気ではなかった。

ゆっくりとした仕草で、ルーファスはベールの裾に手をかけ、頭のうしろへとめくり上げる。

恐る恐るセシルは、ルーファスの深い蒼の瞳をじっと見上げた。
ふたつの視線が、重なり合って――
ルーファスは驚いたように目を見開く。

彼の反応に、思わず瞳に涙が滲む。
いったいなにを想っているのだろう。もしかして、怒っている? それとも、嘆いている?
私なんかが相手では、やはり嫌だったのだろうか。

怖くて、不安で、この場から走って逃げ出してしまいたくなる。

――けれど。
今にも泣き出しそうなセシルを見て、ルーファスはふっと頬を緩めた。

「……お前は、いつでも瞳に涙を溜めているな」
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