イジワル騎士団長の傲慢な求愛
大聖堂の、祭壇へと続く扉が開かれた。
パイプオルガンの荘厳な旋律が広い空間に反響し、幾重にも音を重ね合わせ鳴り響いている。
真っ直ぐに続く身廊の両側に、多くの人々が立ち並んでいて、この式の行く末を見守っていた。

その中央を腕を組んだセシルとシャンテルは、うつむき、一歩一歩進んで行く。

主祭壇の中央に神父様が立ち、その右手前に、純白の礼服に身を包んだルーファスが立っている。

彼のもとまでセシルを送り届けたシャンテルは、身を引き参列者の列に加わった。

「ルーファス・フランドル」

神父が威厳に満ちた声で彼の名を高らかに告げる。

「――汝、シャンテル・ローズベリーを妻とし、いかなるときも変わることなく愛することを誓いますか」

「誓います」

ルーファスのわずかに緊張感を纏った低い声が、セシルの鼓動をざわつかせる。
偽装花嫁――そんな飛んでもない作戦に、セシルの足は今にも震えだしそうだ。

神父は、次いでセシルへと視線を落とす。

「シャンテル・ローズベリー」

慣れない名を呼ばれて、体は余計に固く強張る。

「汝、ルーファス・フランドルを夫とし、その命ある限り、愛を尽くすことを誓いますか」

「――誓います」

シャンテルの真似をして高い声を絞り出したけれど、あまりの緊張に震えてしまった。
周囲は、そんな彼女を初々しいものを見るように眺めていた。
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