イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「そうだ、セシル。ルーファス様にちゃんとお礼は言った?」

「お礼?」

「そうよ。昼間、命を助けて貰ったんだから」

そういえば改めてありがとうと伝えていなかったことを思い出す。
ぼんやりとしているセシルを見て、シャンテルはまだなのだと感づいた。

「ちゃんとお礼しなさいよ。これからはお兄様になるんだから」

「……わかったわ」

「……どうしてそんなに不安そうな顔しているのよ。私も一緒に付き添いましょうか?」

「ううん。大丈夫……」

ルーファスと顔を合わせ言葉を交わすのだと思うと、胸の奥がそわそわとした。
彼という存在からなるべく目を逸らしたい。
彼を見ていると眩しくて、その存在感に圧倒されてしまう。
自分が惹きつけられているだなんて、知りたくはない。

あの嫌いだったはずの意地悪な笑みが、なぜか脳裏に焼きついて胸を焦がし続けているのを、セシルは認めるわけにいかなかった。
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