再会の街
 差し出された手を使わずに、自力でたちがる。


「ケガはないですか?」


 差し出していた手を下ろして、その人は再び話しかけてきた。


「はい」


 本当は打ったお尻が痛いけども。


「あっ」


 ハッと時計を見る。

 待ち合わせに時間まであと1分ぐらいしかない。


「すいませんでした」


 足元に転がったバックを拾って、目の前の人に頭を下げて、その場を駆け出した。


「あの・・・」


 後ろからそんな声が聞こえたような気がしたが、それにはかまわずに駅へと向かった。



「10分の遅刻だね」


 やっとたどり着いた駅の改札口の前で、冷ややかな声が耳に届く。

 声とは裏腹のにっこりと笑った彼の顔。


「ごめんなさい」
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