過保護なドクターととろ甘同居
「お待たせしました」
声を掛け、先生の向かい側の椅子を引き出す。
私が腰を下ろすと、先生は早速カップを手に取り「ありがとう」と口をつけた。
忙しい時間の中に訪れたまったりとした静かなひと時。
温かく甘いカフェモカに癒されながら、カップの中をぼんやりと見つめる。
心地いい沈黙が流れる中で、一点を見ていた私へと先生が声をかけた。
「大丈夫か?」
「えっ?」
「何かぼうっとしてる」
鋭い突っ込みに、ブンブンと首を横に振る。
カップを置いた先生は、私の顔を探るような目をしてじっと見つめた。
「何でもないです。ちょっと昨日、寝不足で、それで少し……」
本当は寝過ぎたくらい、昨日はとっても安眠だった。
咄嗟に出てきた他愛ない嘘を見透かすように、先生は私に視線を送り続ける。
その目から逃げるようにカップに口をつけた。