過保護なドクターととろ甘同居
相手の方も私の顔を見て足を止める。
その手には、うちのお店のテイクアウトのカップが握られていた。
「あ……どうも、こんばんは」
ペコリと頭を下げて、とりあえず挨拶する。
顔を合わせるのは、あの病院での診察以来。
早いものでもう一ヶ月近く前になる。
先生は今日もスーツ姿で、その上に黒いウールのステンカラーコートを羽織っている。
あの日の帰り、病院の前で見た診療案内の看板に『院長、忽那稜(くつなりょう)』と書かれてある先生の名前を発見した。
診療中に看護師さんたちが「院長」と呼んでいたから、間違いはない。
まだ三十代くらいの若さなのに、病院の院長だということに驚いた帰り道だった。
「こんばんは。仕事帰りですか」
「え、あ、はい……」
「最近、お店で見かけないなと思ってました」
先生から返ってきた言葉に意表を突かれ、驚きの眼差しを向けてしまう。
先生はそんな私の顔をじっと見つめていた。
「ここで働いているの、気付いてたんですか?」
「ええ、まぁ」
「そうでしたか……」