過保護なドクターととろ甘同居
「……あの、先生?」
しばらくじっと身を任せて、腕の中から声を掛けてみる。
すると先生はやっと私を解放して、「ごめんごめん」と微笑を見せた。
「可愛かったから、ちょっと癒されてみた」
まだ中身が残っているカップを掴み、先生はその場を離れていく。
「どうしようもない二十七歳拾ったら、家で店のコーヒーが飲める特典付きでラッキーだったよ。また淹れてくれるか?」
「えっ、あ、はい、もちろん」
動揺を隠し切れないまま、そう返事をした私へ、先生は去り際振り向き、端正な顔でにこりと微笑む。
そして「おやすみ」と言い残し、キッチンの入り口を出て行った。
一人になったキッチンで、私は台に手を付き、緊張を放出するかのごとく深く息を吐き出していた。
……抱き枕的な、感じ?
落ち着く、とか、癒される、とか、そんなようなことを言われた。
今の抱擁には、きっとそれ以上の意味は含まれていない。
だけど、私の鼓動は驚くほど高鳴ってしまっていて、先生との近付いた距離にいつまでも心拍が乱れていた。