過保護なドクターととろ甘同居


「ギャップ萌え、か」


いつの間にか椅子から立ち上がっていた先生が、カウンターの向こうからキッチン側へとやってくる。

まだ中身が半分入っているカップが、コトっと大理石のキッチン台に置かれた。

エスプレッソを注いだカップの中身をクルクルとかき混ぜながら、横に来た先生にそろりと視線を上げると、にこりと笑って顔を覗き込まれた。

そして、何故だか手を差し出される。

その手の意味がわからず小首を傾げると、先生は引き寄せるようにして、私を自分の腕の中へと包み込んだ。

そっと、強引さなんて全くない、抱き締める腕の力。

でも、一体何事かと、全身が固まってしまう。

すぐ目の前には、聴診器のチューブが見えていた。

頭上から、ゆっくり深く息を吐き出すのが聞こえてくる。

そして、続いて聞こえてきたのは「あー……落ち着く」というしみじみしたような声だった。

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