初恋マニュアル
愛里たちが入っていったビルの看板にはカラオケの文字。


明らかに遊ぶために入っていったのがわかる。


以前なら、誘ってくれていたはずのそこに、私はいない。


絶望的な気分になって、そのビルの入り口をじっと見つめながら、私はただ立ちつくすしかなかった。



「あれ?丸山?」



ふいに声をかけられてビクッとする。


聞き覚えのある声におそるおそる振り返ると、そこにはやっぱり……



「三浦くん!」



真っ黒に日焼けした肌は、夏休みに入ってからも部活をがんばっていた証拠なんだろう。


さっきの愛里たちも三浦くんほどじゃないけど、やっぱり日焼けしていたななんてぼんやりと思った。


それに比べて夏休みに入って、家に閉じこもっていた私の肌は場違いなほど白く、どう見ても浮いてるようにしか見えない。


こんなときに声をかけられるなんて、自分がはずかしかった。



「丸山んちここらへんなんだ?なにしてんの?買い物?」


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