初恋マニュアル
涼しかった店内を堪能できたのは一瞬だけで、外の蒸し返る暑さにどんどん水分が失われていく。


あてにしていた本屋を追い出されて、私はどこに行ったらいいのか迷ってしまった。



――どうしよう?本屋以外で時間つぶせる場所、あるかなぁ……



あたりを見回してみても、肉屋や魚屋、八百屋に花屋、靴屋や洋服屋もあるけれど、自分が入れそうな場所はない。


仕方なく道路の反対側に目を向けると、女の子が三人、店の中に入っていくのが見えた。


みんな私服で大人っぽかったけど高校生だとわかったのは、その顔に見覚えがあったから。



――愛里だ……



他の二人はたぶん、部活が一緒の子たちだった。


部活で忙しいとばかり思っていた愛里が、別の友達と遊んでいることに、私はかなりショックを受けた。


連絡をくれないのは、部活が忙しいから……


そんな風に自分に言い聞かせていた理由が、ガラガラと音を立ててくずれさっていく。


――やっぱり、まだ怒ってるんだ……


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