浅葱色の鬼

歳三

紅音の治療をしようと山崎が着物に手を添えた瞬間



「治療など必要ない
沖田だったか?アレを掘り起こせ」


「アレ?って…」


「命の力を埋めただろう」


「ああ、アレですね!」



キツネが喋った…

話に聞いていても実際に見ると
何とも不可思議



総司は、昔から犬猫が喋ればいいのにと
言っていただけあり

夢のように嬉しいことだろう




「紅音が生きていればいいのだろう?
ならば、そばに置くのをやめろ」




キツネが、鋭い目つき
低い声色で俺に言い放った




「持って来ましたよ!!!」


「紅音に、命拾いをして貰う」



封印した命の力を解放すると
紅音の出血が止まり
顔色が戻ってくる



「紅音!!」



目を覚ました紅音が、少しふらつきながら
近藤さんの怪我に手を添えた




「大丈夫 私が助ける」




俺に微笑んだ




〝痛いのは、嫌だ〟




そう言っていた紅音が、腕の傷が痛むのを
歯を食いしばり、耐えて傷を自分に移した



疲れ、倒れ込む紅音を腕に抱きとめる





命拾い… 命に戻ったってことか?






キツネに視線をやると





「もう…人にはなれぬ」






クルリと背中を向けた





「キツネさん!
紅音さんは、大丈夫ですか?」




総司が、俺の心配事を聞いてくれた




「さあな」





キツネにもわからない未知の出来事







言いしれぬ不安が俺たちを支配した









腕の中の紅音をぎゅっと抱きしめる











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