浅葱色の鬼
屯所に連れ帰り、翌朝
目覚めた紅音は、俺の腕から抜け

「気安く触るな」


そう言って、廊下に出たが


立ち尽くしていた


「庭眺めるの好きだな?」


「そっちこそ、庭の前の部屋が好きだな」


口調で、もしかしたらと思っていたが
人になる前の紅音だ


「紅音」


「屯所… また変わったんだな
これじゃ、医務室がわからぬ」


「具合悪いのか?」


「治療しに行く」


「そうか こっちだ」



咳をする総司の隣で、まだ目を覚まさない
近藤さんが横たわる



近藤さんのそばに座る紅音に、ハッとした


治療って… 近藤さんのことか



そう、気がついた時には、近藤さんと
紅音の唇が重なった



呆然とする俺と
咳をすることも忘れる総司


これは… 治療なんだ…



わかっていても、つれぇもんだ





「んっ… いかん!」


「ジッとしてろ まだ治ってない」



目を覚ました近藤さんが、紅音を押しのけ
治療を拒む



「治って…る
治っているじゃないか!!!
どうしてだい?紅音…?君が?」


「他に命は、いない
近藤、完全に治療させてくれ」



「その気持ちだけで十分だよ
紅音 治療とはいえ、好いてない男と
口づけなどするものではないよ」




表面的には、怪我は治っているのに
紅音の言うように完全ではない為
近藤さんは、発熱し寝込んだ




「私なら… 治せるのに…」






何度も治療を申し出る紅音に
近藤さんは




「歳に恨まれたくないんだよ」





笑っていた





















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