浅葱色の鬼
近藤さんの言い分は、良くわかる



俺は、君菊をほったらかしにしている

そのことで、君菊が俺を責めることはない
紅音を妻にしたいという俺を
許してくれている
それが、本心か我慢かは、わからないが
君菊を傷つけていることは、間違いない



こうした犠牲を払っても
紅音を妻にしたいと思っている


わかりやすい俺の気持ちは
幹部達には、丸わかり


「諦めきれないんでしょう?」



総司が俺に問いかけてきた



「総司、諦めるべきだ
歳も紅音も、今以上に苦しむかもしれない」



「にゃーん」


襖を爪で開け、蒼が入ってきた



斎藤が、蒼を膝に乗せ背中を撫でた




「紅音に、行くアテがあるのか?」




ポツリと斎藤が言った疑問



「……しまった」


近藤さんが、青くなる

珍しく感情に任せて紅音を追い出したから
その先を考えてなかったらしい




「多分…… 社だ
そこしかねえだろ…」


俺が言うと
申し訳なさそうに


「……崩れたよな?」


永倉が言った





顔を見合わせて、苦笑い




「行ってくる」




こんな夜に?
なんて、誰も止める訳もない

こんな夜に紅音を野宿させるなんて
有り得ない選択だ


「俺も行く」


次々に立ち上がる中




「皆、お揃いで!話が早いわ!」



天井から、山崎が下りてきた


「ここに戻る途中で、紅音に会うたで!
幽霊みたいに歩いてたさかい
松本先生のところに預けてきたで!
ほんで、何で追い出したん?」




偶然とはいえ、優秀な忍に
助けられたものだ





昼間の出来事を聞かせると




「困ってんねやろな…
なぁーんも思い出せへんで
居場所探してるんちゃうか?
恋心を抜きにして貰うか
皆と初対面からやり直すか
考えてたら、自分の存在がわからんなった
そんなとこやろな
せやけど、ホンマに死にたがっているふうやなかった
あわよくば、解放されたかったかもやけど
副長が知ってるか、試したんちゃう?」




紅音が何を考えていたとか
そんなことにも気遣えず



思い出して欲しい気持ちを
押し付けていたんだと
反省すると同時に、決断した











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