浅葱色の鬼
惚れ込む
紅音は、懐から梅の簪を出した


土方が目を見開く



「それ…… 持っててくれたのか」



「これは、としさんがくれた」


「としさんは、俺の事だ」


「土方じゃない!としさんがくれた!」




近藤が紅音に微笑む


「思い出したのかい?」


「としさんがこれをくれた日の事だけ」


「俺が、紅音を好きだと言った日だろ」


「としさんがだ!」


「としさんの生まれ代わりが俺なんだ」


「そんなの知っている!!
でも、私が知っているとしさんと
お前はまるで違う」


「……んなコト言ったら
紅音だって!あの時の紅音と違う!!」


「土方は、あの時の私が好きか?」


「どっちも好きだ」


「まだ、妻にしたいと思っているか?」


口にしないと約束した土方は、コクリと頷いた



「そうか」




紅音が土方の頬に手を添えた



「私は、人になりたい」


「300日しか、生きられないって……」


「それ以上に生きてきた」



優しく土方の頬を撫で



「人になりたい」



「紅音……」



紅音が土方から手を離した



「私が人になり、全てを忘れてしまっても
私を好きでいてくれるか?」


「ずっと好きに決まってんだろ」


「私が、他の人を好きになったら?」


「幸せならいい」


「今までの私と全くの別人になったら?」


「変わんねぇよ」


「では、私が土方の事を好きになったら
妻にしてくれるか?」


「ああ」


「戦に行っても帰ってくるか?」


「必ず」


「もう、怪我を治す力がなくなる
それでも、ここに置いてくれるか?」


「「「「「「当たり前だ!!!」」」」」」



全員が返事をした




「どうなるのかわからぬが
どうせ、命など必要のない世なのだ
私も、皆と同じ感覚が欲しい」  





希望に満ちた紅音の笑顔を見た幹部達は
紅音が決めたのならと
反対することはなかった











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