浅葱色の鬼

歳三

来年の春までは、今のまま


正直、ホッとした




紅音がどうなるのか不安だった





俺の気持ちは、変わらない

〝としさん〟だった頃の感情
そのまま生まれ変わったんだ


紅音に何も約束を出来なかった

あの〝としさん〟とは違う


今の俺は、紅音を守り、幸せに出来る



子供の頃から、梅の花が咲く度
切ない気持ちになった

梅の名がつく女は、自分の女にしたかった


記憶を取り戻し紅音に惚れた今


何が何でも、妻にしたい


だが、約束は守る


俺からは、口に出来ない
だからこそ


「では、私が土方の事を好きになったら
妻にしてくれるか?」



嬉しかった

頑なに妻にならないと言い続けていた
紅音からの言葉


人にならなくても
ずっと一緒ならそれでいいのに


本音を言えば


また置いていくのかと言われそうだ







人になり、紅音が300日で
この世を去るとしたら




俺は、今度こそ


鬼になっちまいそうだ




紅音のいない世を守ることが
出来るだろうか




「おい そこ私の場所だ」



俺が座っている場所は、確かにいつも
紅音が庭を眺める場所

不機嫌な物言いに、からかいたくなってしまう


「先着順だ たまには、俺に譲れよ」


「嫌だ」


真顔で言うあたり、本気で嫌なのだろう


「なんだ!?喧嘩か?」

「珍しいな!」


ぞろぞろと集まってくる幹部らに
俺の横が埋められた

これじゃ、俺が退かない限り
紅音は、座れない



「歳の横をあけてくれるか?」



近藤さんが、助け船を出しに来たかと想ったら

紅音をヒョイと俺の膝に乗せ

俺の隣に座った


最高に嬉しいが
紅音の不機嫌が、心配だ


「これで、皆が座れたね」


近藤さんが紅音に笑いかけた



「そうだな」



俺からは、紅音の表情は見えないが
拒まれなかったことにホッとした





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