本当にあった本当の話「死闘」
奴、現る
 俺には宿敵ともいえる奴がいた。しかし、奴はここ最近姿を現していなかった。今考えればそれこそが俺を油断させる奴の策だったのだ。俺はまんまと奴の策にはまり、油断しきっていた。



 昨夜の深夜、自宅でのことだ。俺は身体を清めるため、風呂に入ろうとしていた。そんな無防備な状態の俺を奴は襲ったのだ。完全なる不意打ちだった。
「き、貴様!!夜討ちとは卑怯だぞ!!」
奴の奇襲に俺は混乱した。奇襲は奴の得意とするところだった。俺はそれを忘れていたのだ。
俺はこれまで幾度となく奴と戦い、そして負け続けていた。いや、戦う前から勝つことを諦めていたのだ。奴のその風貌を見ただけで、俺は恐れおののいていた。現にこの時も逃げたくて仕方なかった。俺は後ずさり、踵を返そうとしていた。

――本当にそれでいいのか?奴に勝ちたくはないのか?

もう1人の自分が俺に問いかけてきた。そうだ。このままでいいはずがない。俺は武器を手に取り、逃げたい気持ちを必死に抑え、奴に立ち向かった。
用意した武器は近距離武器と遠距離武器の各1種類だ。俺は右手に近距離武器を、左手には遠距離武器を強く握り締め、攻撃を仕掛けるタイミングを見計らった。
そんな俺の殺気に気付いたのか、奴は距離をとってきた。しかも、奴が移動したその場所は攻めにくい場所だった。

――近づきすぎたり、下手に攻めればこっちがやられる

俺はそう感じとっていた。戦況は膠着状態となった。



 どのくらいの時間が経っただろうか。額に変な汗が[[rb:滲 > にじ]]み出てくる。俺はそれを手で拭った。

――このままではラチがあかない!

俺は意を決し、奴に遠距離攻撃を仕掛け、移動したところを近距離攻撃で討つ、という作戦に打って出た。
少しずつ奴との距離を縮めていく俺。絶対にこの一撃は外せない。そんなプレッシャーが俺を襲った。緊張で手が震える。
そして、俺はついに奴に遠距離攻撃を仕掛けた。奴は悶え苦しんだ。ここまでは計算通りだった。
だが、奴は思わぬ行動に打って出てきた。あろうことか、こちらに向かってきたのだ。
「ここで特攻を仕掛けてくるだと!?バ、バカな!!」
動揺する俺をあざ笑うかのように、奴はこちらに向かってきた。だが、先程の遠距離攻撃が相当効いているのか、動きが鈍い。自慢の翼で飛ぶこともできないようだ。

――これはチャンスだ!!仕留めるなら今しかない!

俺は近距離武器を振りかぶり、絶好のタイミングを待った。
「その首、もらったあぁぁぁー!!!」
俺は渾身の力を込め、近距離武器を奴の頭上に振り下ろした。
「やったか!?」
しかし、奴は最後の力を振り絞り、こちらに猛然と向かってきた。
「あひゃあぁぁぁーー!!?」
俺は奇声を上げ、あまりの恐怖にその場で飛び上がった。我ながら滑稽すぎて自分でも笑えてきた。
だが、さすがに奴も無事ではなかった。もはや虫の息だった。俺は深呼吸をし、自身を落ち着かせた後、再度横たわる奴の頭上に近距離武器を全力で振り下ろした。奴は俺の近距離武器の下で息絶えた。
「やった……!俺は、俺はついにやったんだ!!」
俺は勝ち鬨を上げ、勝利の余韻に浸った。まだ手の震えが止まらない。
しかし、まだ油断はできない。もしかしたら、奴の仲間が近くに潜んでいるかもしれないからだ。その後も俺は警戒を続けた。異様なまでに研ぎ澄まされた神経がいつも以上に働いた。



 その後、結局奴の仲間は現れなかった。どうやら奴だけだったらしい。
これが奴との、"ゴキブリ"と俺の戦いの全記録である。

最後に今回俺が奴に使用した武器について書き記しておく。今後の奴との戦い役立ててくれたら幸いだ。



近距離武器:タウンページ
遠距離武器:キッチンクリーナー(油汚れに強い。スプレータイプ)



 奴は君たちのすぐ近くに潜んでいる。決して油断しないことだ。それでは、武運を祈る。
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