クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「このハンカチを持っていたことがなによりの証拠だ」


レオンはさきほどヴァネッサからもらい受けたハンカチを彼女に見せた。
真っ赤なバラの刺繍。それは、フィアーコのバラ園に咲いている花のように可憐で気高かった。


「以前も話したことがあったが、顔に面影が残っている。それに……」

「……それに?」

「あの曲を懐かしいと感じることもクレアであることの証だ」


レオンが大ホールで弾いていたパイプオルガンだ。初めて聴いた曲のはずが、なぜか懐かしく感じた。不思議なことに、今でもメロディを口ずさむことができる。


「私が作った曲を“マリアンヌ”が知るはずはない」


レオンは首を横に振って否定しながら、マリアンヌを愛おしそうに見つめた。


「これでよくわかったよ。“マリアンヌ”にどうしようもなく惹かれた訳が」


レオン自身も不思議だったのだろう。

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