クールな王太子の新妻への溺愛誓約

マリアンヌは息の止まる思いがした。


「クレア、ずっと会いたかった……」


大好きなレオンの腕の中にいる。
それなのに自分ではない、違う人のことを言っているように聞こえて素直に喜べない。

別の人のことを想いながらでもいい。レオンのそばにさえいれれば。そう思っていたはずなのに、突如、自分がその“別の人”本人になってしまったのだ。戸惑わない方がおかしい。


「……レオン様」


やっとの思いで口を開くと、レオンは彼女を引きはがし優しい笑みを浮かべた。


「レオンでいい。クレアは幼い頃から私のことは呼び捨てだったから」

「ですが……」

「敬語もなしだ」


レオンが人差し指を立て、軽く横に振る。
なにもかもが突然で、すぐに順応しきれない。


「私は本当にクレアなのでしょうか……」

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