クールな王太子の新妻への溺愛誓約
そうして食べ終え、レオンを送り出そうと部屋のドアを開けたところで、ふたり揃って心臓が飛び出てしまうほどに驚かされた。ベティが気難しい顔をして立っていたのだ。
「ベ、ベティ、どうしたの?」
「僭越ながら、レオン殿下とマリアンヌ様が婚前交渉に入ろうとしたならば、踏み込もうと待機しておりました」
ベティがいたって真面目に答える。
おそらくドアに耳を近づけて、部屋の中の音を探っていたのだろう。話をすべて聞かれていたのかと思うと恥ずかしい。
もちろん結婚をするまでキスより先へ進むつもりはないが、キスの気配まで筒抜けだったのかと思うと身の置きどころがなくなる。
「ひ、ひどいわ、ベティ。そんなことをするつもりはないもの」
そこを懸命に立て直し、ベティに言い返す。
それに、まだ“やり方”もわからない。ベティに教えを乞うまでは、とうてい無理なのだ。心の準備だって整っていない。
「ベティ」
レオンが努めて冷静に声をかける。