クールな王太子の新妻への溺愛誓約
とはいえ、なにもできない温室育ちの姫ではない。国民と良好な関係を築いているピエトーネでは、王宮から頻繁に馬で街に出掛け、自発的に民と交流をはかってきた。
時にパンを一緒に焼いたり、田畑で農作物の収穫を手伝ったり。それは、国王であるアンニバーレと王妃ヴァネッサがそうしているのを見てきたからこそだった。
壁を作ることなく接する王族に国民も親近感を持っており、マリアンヌがピエトーネへ嫁ぐことが決まった時には、喪にでも服してしまったかのように街がひっそりとしてしまった。
それでもいざ国を出発する時には、国民総出で華やかに送り出してくれたが。
それだけ愛されている王女だった。
その時のことを思い出し、マリアンヌは目頭が熱くなる。
「国のことを思い出されてしまいましたか?」
俯いたマリアンヌにベティが心配そうに尋ねる。
「ううん、違うわ」
ベティにあまり心配をかけたくない。ベティも住み慣れた国を離れて、マリアンヌについて来てくれたのだ。自分ひとりばかりが寂しいわけじゃない。