クールな王太子の新妻への溺愛誓約
まず案内されたのが、王宮の中で一番大きいとされる噴水だった。ガーゴイルを模した彫刻の口から豊富な水が流れている。全体的に白い噴水は宮殿と色合いが同じで、調和の美を感じさせる。
透き通った水に手を入れると冷たさが心地いい。
「マリアンヌ様、お手を」
「ありがとう」
すかさずベティがハンカチで拭ってくれた。
「それにしても、ここは本当に美しい王宮ね」
「さようでございますね。ピエトーネも緑豊かな美しい国でございましたが、王宮の立派さはフィアーコに敵わないように思います」
「本当にそうね。フィアーコが大国だとは知っていたけれど、これほど立派な王宮だとは思いもしなかったわ」
王宮の大きさから施されている装飾の数々。手入れの行き届いた見事な庭園。なにからなにまで規模が違う。
マリアンヌは、生まれてこのかたピエトーネから一歩も出たことがない。そこしか知らないのだから無理もないことだが、ピエトーネが彼女の世界の全てだった。
両親からの愛情を一身に受け、とても大事に育てられてきた。