クールな王太子の新妻への溺愛誓約
いつまでも呆然としているマートに、マリアンヌが小首を傾げる。
「――これは申し訳ありません!」
マートが背筋をピンと伸ばし、両手を脇に揃える。
「マリアンヌ様が、噂に聞いていた以上のお方だったものですから」
「……噂ですか?」
いったいどんな噂だったのだろうかとマリアンヌは不安になった。
小国のフィアーコから来たのでは、大国ピエトーネに相応しくないというものか。それとも、華麗なる王太子であるレオンに釣り合わない容姿ということか。
「いえ、そのですね……」
マートはどうしたものかと、自分の頬を掻く。
「なにかよくない噂でしょうか?」
あまりにもマートが言いにくそうにしていることが、マリアンヌの不安を余計にあおる。レオンに受け入れてもらえていない現実が、マリアンヌから自信を失わせていた。