クールな王太子の新妻への溺愛誓約

メイがうっとりとしたようにふたりを眺める。それにつられるようにして、集まった人たちも「本当に美しいわぁ」と頷き合っていた。


「ささ、マリアンヌ様、今日もまたうちのパンを召し上がってくださいませ」


メイがマリアンヌに手を伸ばすと、咄嗟にレオンがその間に立ちはだかる。マリアンヌを守ろうとしたのだろう。
冷ややかな視線で見下ろされ、メイは驚きに目を見開いた。


「レオン様、ここはフィアーコの街です。そんなに肩肘を張らなくても大丈夫でございますよ」


ちょっとしたくすぐったさを感じながらマリアンヌは優しくそう言い、レオンに「参りましょう」と笑いかける。
レオンは一瞬戸惑うように目を泳がせたが、すぐにいつもの涼しげな表情を浮かべ小さく頷いた。

急に強いられた緊張に顔を強張らせていたメイはそこでやっと笑顔が戻り、「レオン殿下もこちらへ」と店へ先導した。


「マリアンヌ様、申し訳ございません。揚げパンはまだできていないんです……」

「それは残念ですね。でも、このお店のパンはどれもおいしいですから」

< 97 / 286 >

この作品をシェア

pagetop