わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
「ごめん、手短に話すね」
「うん。外線、結構たまっちゃってるから、ほんと手短にね。で?」
「今さ、横浜で新年会やってるの。メンバーひとり足りなくて、仕事終わったら来てほしいんだけど」
「メンバーって?」
「あー、サルサの」
「サルサの新年会?」
「そう」
「でも、わたし、サルサなんて踊ったことないし……」
「大丈夫、大丈夫。今日は踊らないから。予約してるからキャンセルできないのよ。来て、食べてくれるだけでいいから」
「それなら、いいわよ」
「良かった」
「あと十五分で上がれるから」
「うん。場所はメールに入れとくね」
「オッケー」
「じゃ、あとでね」
「うん」