桜が咲く頃、君の隣で。


「……え、死ぬって……なに言ってんの?」


脳が揺さぶられ頭が真っ白になり、激しい動悸が俺の心臓を襲う。



「死ぬの。どうせ死ぬの! だから……」


俺は一度ゴクリと唾を飲み、震える手に力を込めた。



「だから、私に近付かないで! 話しかけないで! お願い、お願いだから……笑いかけたりしないで!」



走り去る彼女の瞳から、大粒の涙が零れ落ちるのを見た。



誰もいなくなったベンチから蕾の付いた桜の木を見上げ、そして空を仰いだ。


風の冷たさを感じない代わりに、心臓を突き刺されたような衝撃が体中を駆け巡る。



俺は一人、ただそこで呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。









< 50 / 50 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:56

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

はじまりと終わりをつなぐ週末

総文字数/17,311

その他22ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
 誰にも見られなければ、誰からも気付かれなければ、傷付かなくて済む。  だから私は、透明になることを選んだ。  けれど透明人間になったはずの私の心はいつまでも痛いままで、自分がそこにいる意味さえ見つけられない。  どこにいたって、苦しみが付きまとう。  偽りの色を塗ってみても、自分という人間にはなれなくて  このまま答えを見つけられずに大人になっていくのだと、そう思っていた。  真っ暗な狭い世界の先に、微かな光を見つけるまでは……。 10月28日スターツ出版文庫より発売。 *一章までの公開です。 こちらは編集前の内容で、書籍では変更している部分がありますのでご了承ください。
そして君に最後の願いを。

総文字数/23,049

恋愛(純愛)27ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
思い出してほしい。 君がくれた、沢山の優しい言葉を。 勇気を出して、もう一度顔を上げてほしい。 君の優しい光は、きっと誰かを救う力になるから……。 ~~~~~~~~ ★こちらは編集前の内容で、文庫版では大幅に加筆修正しています。 ★書き下ろしのため、第一章まで公開となります。
クールな御曹司と溺愛マリアージュ
  • 書籍化作品
[原題]Change~不器用な君に愛の手を~

総文字数/118,756

恋愛(逆ハー)159ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
恋愛に臆病 二十七歳、地味OL 柚原恵梨 × 毒舌クール 三十一歳、社長 佐伯渉 新会社設立に伴って行われた面接。 恵梨は人生の分岐点に立つこととなった。 過去の失恋によって自信をなくした恵梨は恋愛から遠ざかっていたけれど、クールな社長の時々見せる優しさに惹かれていき……。 『楽しいのは、お前が隣にいるからだ』 『俺が変えてやる』 ※マカロン文庫より9月刊行となります。 読んでくださった皆様のお陰です、ありがとうございました。 新たに番外編も書いたので、そちらも楽しんで頂けたら嬉しいです♪ 電子書籍ではマカロン文庫用に再編集していますので、こちらの作品はこのまま残します。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop