不機嫌なジェミニ
「藤野 透子です。よろしくお願いします。」と顔を上げると、

目の前の長テーブルに5人の人が並んでいる。

もちろん真ん中に成宮 仁。
今日は随分と印象が違う。

細身のスーツが似合うのは前と同じだけど、
髪は緩くウェーブをかけて短く整えられていて、銀縁のメガネは知的に見える。
去年より、ずっとソフトなビジネスマンの印象だ。

「初めまして、成宮です。座ってください。」

と少し口の端をあげて微笑むところはやっぱりカッコイイ。


さっきの背の高い王子も端っこに座っている。

…セイジさんもデザイナーだったのか…と少し思いながら用意された椅子に座った。

おきまりの学歴や、志望動機などが聞かれ、

「じゃ、お題のデザイン画を出して。」と言われ、

横に置いたバッグから、デザイン画の束をファイルを取り出し、成宮さんの前に差し出す。


私が椅子に戻って下を向き、ギュッと目を閉じると、
成宮さんがパラパラとデザイン画をめくっていく音がする。

「ねえ。これってどういう事?」という呆れた声がする。

「は?」と目を開けて前をみると、差し出されたデザイン画に大きなバツがついている。

「これはダメなやつ?間違って出した?」

「い、いいえ!…なんでバツが…」

と立ち上がって成宮さんに近寄り、慌ててデザイン画を見ると、
どのデザイン画をにも大きなバツがついている。

なんで?

どこでバツが!?










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