不機嫌なジェミニ
マンションに戻ると、香澄がやっと起き出した所だった。

気の抜けた顔で帰った私を見て、
「トーコちゃん、なんか失敗した?」と私の顔を覗く。

「なんかバイトする事になった。」と言うと、

「バイトの面接に行ったの?」

「そうじゃないんだけど…内定出すって言われたかも…」とソファーに倒れると、

「…口約束って…どんな会社なのよ。」と香澄が呆れた声をだす。

「…えー、と去年出来た会社で、社員は50人位…」

「ちっさ。なんかブラックな会社で、こき使われて続かなくておしまいってヤツじゃない?」

「い…いやそんな事…大きなジュエリー会社の子会社だし…
何よりジュエリーデザイナーで雇ってもらえる…」

「ふーん。内定通知書が来たら信じてあげてもいいかな。
お祝いにピザ頼もう。」とやっと笑顔を見せた。

「…夕飯作りたくないだけじゃん。」と言うと、

「気にしないで。ピザ頼もう!やっとお腹がすいて来たー。」
と香澄が伸びをして、スマホでピザを選んでいるみたいだ。

…なるほど
内定通知書か…

明日バイトに行ったら、聞いてみよう。



と思いながらよいしょっと立ち上がって

…ところで…バイトって何するんだろう

と思いながら窮屈なスーツを脱ぎ捨てた。







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