不機嫌なジェミニ
天井までガラス張りの部屋は広く明るく、
真ん中に歪んだドーナツ型の大きなテーブルが置かれている。
座り心地が良さそうなデザイン違いの黒いイスがドーナツの外側に15個並んでいる。
後は壁に沿っていくつかのデスクと印刷などする複合機かな…

白い壁と黒い家具。
スタイリッシュな部屋。


後は窓際の一角に大きなデスクと椅子。
これも黒。
パソコンとデザイン画が散らかる机は仁さんのモノだろうか…

隣には、黒いレザーのどっしりした3人がけのソファとテーブル。
ちょっとしたお客さまを案内するのかもしれない。

「ここにいるのは今は4人。
ジンさんと、ジンさんの秘書の女の子と僕と、トウコちゃん。
4月には何人か配属されそうだけど…ドーナツの机、好きな場所に座って。
はい、ノートパソコンと、社員証とロッカーの鍵。
社員証で4階の入り口のドアが開くんだ。」と私に差し出してくれる。

「は、はい!」と受け取り、ドーナツの机の入り口に近い空いた席に荷物を置くと、

「ロッカーはここ」と壁に作り付けになっている長方形のドアを指差し、
TOUKOと飾り文字で彫金された金色のプレートが付いているロッカーに感動する。

「…私のロッカーだ。…」

「大きいでしょ。資料や着替えや靴も入れていいよ。シャワーも奥にあるし…」

「へ?」

「ぼくたちデザイナーは服装は自由なんだけど
まあ、ボスの気まぐれで、社外に連れて行かれることもあるからね。
スーツとか用意した方がいいかも…」とセイジさんは私ににっこり笑いかける。


なるほど…

ジンさんは気まぐれなボスって事だ。

わかっていた気がするけど…

…後はブラックではない事を祈ろう。
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