不機嫌なジェミニ
バレンタイン当日。

ラッピングしたブラウニーをカラフルな可愛い紙袋に入れて香澄に持たされ、

『D』の部屋の前でため息をつく。

大人の仕事仲間に手づくりチョコはないだろう。って思ったけど…
と明らかにお菓子が入っていそうな袋をもって、部屋にはいるのが恥ずかしくて入り口でためらっていると、


背負ったリュックをクンっと後ろから持ち上げられ、

「わっ!」と驚いて紙袋をガサッと落としてしまった。

「トウコ、そんなとこに立ってると邪魔だろ。」ジンさんが口の端をあげて私を見下ろす。

「す、すみません!」と頭を下げると、

「チョコ?…ああ、バレンタインか。」とジンさんが紙袋を拾いあげ、中身を見ながら部屋に入って行く。

「あ、ブラウニーです。毎年作ってるので、つい…あの…持ってきてしまいました。」
とジンさんの後ろを付いて歩くと、

「なに?手づくりのバレンタイン?」とジンさんの後ろにいた蘭子さんも袋の中を覗き込む。

ああ、恥ずかしい。

「そ、それはオマケで、ちゃんとしたチョコも用意してます!」とリュックから箱を取り出して、

「いつもお世話になっています!食後のデザートにどうぞ」とジンさんとセイジさんと、蘭子さんに配ると、

「あ。ピエール・サイモンだ。」と蘭子さんは嬉しそうにして、私に微笑んでくれる。









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