不機嫌なジェミニ
「こっちは?6個?」とジンさんが中身を確認している。

「あ、えっと、ジンさんと、セイジさんと蘭子さんと、私と『マッキンレー』のマスターご夫妻に」と言うと、

ジンさんは蘭子さんと私にブラウニーを手渡し、

セイジさんには自分んの持っていたピエール・サイモンのチョコレートをはい。と渡して

「あとは俺の。マスター夫妻には俺が買って渡す。」と紙袋を持って自分デスクの上に置いた。

「ジンさん!僕もトウコちゃんの手づくり欲しい!」
とセイジさんがジンさんのデスクに行って、ピエール・サイモンと交換しようとすると、

「誤解を生むチョコは食うな」とジンさんがセイジさんの手を止める。

「だって、トウコちゃんは僕の分もあるって言ってたじゃん」

「トウコのチョコは男には配らん。全部俺が食う。」


はい?

「なんで?」とセイジさんがあきれた声を出す。

「もう、俺がトウコの予約をしたんだ。全部。
だからセイジの分はない。」とセイジさんに微笑みかける。


「ジンさん…いつの間に…
…そうなの?トウコちゃん?
ジンさんの予約済みなの?」

とセイジさんが私を振り返る。

え?

「えっと…」と視線をさまよわせると、

「そうだろトウコ。ちゃんと、この間ベッドの中で言った。」とジンさんは満面の笑みを私に向ける。

今そんなこと言う??

「…」私は下を向いて耳まで赤くなる。



「…嘘だあ!」とセイジさんの大声と

「うひゃあ…
セイジ、もうだめじゃん」という蘭子さんの笑い声をうつむいたままで聞き、

「トウコ、美味いよ。ありがとう」とジンさんはマイペースで、ブラウニーをかじった。
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