タイムリープ
「梢、好きだった」

「えっ!」

突然、過去形の言葉が彼の口から聞こえた。

「詩織が死んだのに、俺たちだけが幸せになることはできない。別れよう、梢」

電話越しから、優太は切ない声で私に別れを告げた。

「嫌。そんなの嫌!優太は、何も悪くないよ!だから、別れるだけはやめて!」

私は、泣きながらそう言った。

今、流している涙には色々な感情が含まれていた。

「無理だよ、梢」

電話越しから、優太のかすれた声が聞こえる。

「どうして?私、優太のことが大好きなんだよ」

「俺も、清水のことが好きだ。大好きだ。でも、ごめん」

また苗字で呼ばれて、彼は一方的に電話を切った。

「優太、待ってよ!」

私は、叫ぶように言った。

「………」

優太の声ではなく、電話の切れた音が私の耳に切なく聞こえる。

ーーーーーーどうしてこうなるの?

私は、スマートフォンの液晶画面を呆然と見つめながら、そう思った。

約束のデートもしてないし、彼とまだほとんど喋っていない。

「戻りたい…………」

私は泣き崩れながらそう思った。

彼に告白される時に。

詩織が死ぬ前に。

詩織とケンカする前に。

泣きながらそう思ってると、いつの間にか私は首に下げていたピンク色のハートのネックレスに触れていた。その瞬間、ピンク色のネックレスが光り始め、私の体全身を包み込んだ。
< 67 / 210 >

この作品をシェア

pagetop